ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

学習する組織とは

学習する組織とは

組織力は組織メンバー間の相互作用
組織メンバーがビジョンを共有しながら、行動と学習を自発的に繰り返すことで、組織全体の能力が高まっていく組織のことです。

「学習する組織」の初期提唱者であるハーバード大学のクリス・アージリスは、組織的な学習に着目。メンバーが与えられた課題について対処するのではなく、状況に対応して課題に対する前提や仮説を修正していく学習が競争優位を生み出すことを示しました。

所属メンバーの自主的な学習を促進し、相互作用を通じて競争力を維持するための持続的な変化を行う組織的能力を身に付けた企業や団体などは、学習する組織です。従来の権威主義的な組織——「管理する組織」に対置される新しい組織モデルと言えます。

学習する組織は問題発見・課題解決型

管理する組織が“効率”を指向しているのに対し、学習する組織は問題発見、問題解決に対処することがテーマとなっています。問題解決型組織において、構成員は顧客ニーズなどの状況を把握したり、課題や解決策を発見したりするために継続的に学習を行うことが望まれます。

学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)を提唱したのはマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のピーター・M・センゲ。1990年に出版された『The Fifth Discipline』によって世界中に広まりました。

センゲの言葉では「人々が継続的にその能力を広げ、望むものを創造したり、新しい考え方やより普遍的な考え方を育てたり、人々が互いに学びあうような場」「人々が強い意欲を持ち、コミュニケーションの方法を学びながらシステマティックなアプローチによって共通のビジョンの実現を目指すチーム組織」と定義されます。

5つの学習領域


コミュニケーションが組織を活性化する
前掲書でセンゲは、実現手段として次の5つの構成技術(ディシプリン)を挙げています。

1.システム思考(systems thinking)
ビジネスにおける構造的相互作用を把握する力。つまり、あらゆる物事・事象を相互関係で捉えることで、一連のシステムとして理解する考え方です。

2.自己マスタリー(personal mastery)
メンバー1人ひとりが自己を高める意志を持つ。つまり、自己の人生におけるビジョンと現状の差を明確に認識することで、継続的に自己の能力向上に取り組むことです。

3.メンタルモデルの克服(mental models)
凝り固まったものの考え方を克服する。つまり、個々人の心に固定化されたイメージや概念を明示的に捉え、検証・改善していくことです。

4.共有ビジョン(shared vision
個人と組織のビジョンに整合性を持たせる。つまり、将来の姿を構成員全員で共有することです。

5.チーム学習(team learning)
対話を行うスキルと場を養う。つまり、意見交換やディスカッションにより、共同してチームの能力を向上させていくことです。

学習する組織の基礎となるのが、上記1のシステム思考です。これはシステムダイナミックスに由来する思考技法で、センゲは企業の問題解決にシステム思考のみで十分と考えていましたが、足りない部分があるとしてラ学習する組織にたどり着きました。学習する組織におけるシステム思考は、組織の持つ複雑性を正しく理解し、ほかの4つのディシプリンを統合する役割を担うものとされています。

なお、1990年代後半からは、学習は組織を超えて行われるという意味で、範囲を拡張した「ラーニング・コミュニティ」という語も使われるようになっています。


学習する組織−3つの力


学習する組織を創造することはリーダーの役目
学習する組織を創造するには、次の3つの力をバランスよく伸ばす必要があります。

1.自らを動かす力
「自らを動かす力」とは、個人、チーム、組織が、自分たちが本当に望むことを想い描き、その望むことに向かって自ら選んで変わっていく能力のことです。自らのありたい姿を憧憬し、その実現に向けて研鑽を続ける「個人マスタリー」を高め、組織で「共有ビジョン」を紡ぐことで、内発的な動機にあふれた個人がその「想い」を重ねた集団を創り出します。

2.複雑性を理解する力
「複雑性を理解する力」とは、自らの理解と他の人の理解を重ね合わせて、さまざまなつながりでつくられるシステムの全体像とその作用を意識し理解する能力です。とりわけ、さまざまな利害関係者との絡みの中で、時間の経過と共に展開されるダイナミックな複雑性を理解する「システム思考」の修得が鍵を握ります。

3.共創的に対話する力
「共創的に対話する力」とは、個人、チーム、組織に根強く存在する無意識の前提を振り返り、意識しながら共に創造的に考え話し合う能力です。世界がどのようになっているかの意識・無意識の前提が「メンタルモデル」です。また、メンタルモデルを意識して、保留しながら話し合うことができることが、ダイアログなどの「チーム学習」には重要な要件となります。

学習する組織の3つの力は、3本脚の椅子にたとえられます。つまり、どれか1本だけ長くても安定しません。ビジョンだけが強いと絵に描いた餅に陥りがちですし、考えてばかりで選択がなければ行動につながりません。どんなに気持ちのいい対話をしていても、ビジョンや現実の複雑性の理解がなければ話しておしまいです。3つの力をバランスよく伸ばし、実践することが必要なのです。

変化の激しい時代、学習する組織が必要

グローバル経済において企業の平均寿命は意外と短いもの。世界ランキングに入るような大企業であっても、その多くは環境変化に脆弱です。その中にあって、学習する組織は他の組織には見られない優れた特性を発揮して、長期に持続的な発展を遂げてきました。

その秘訣は、3つの優れた組織特性にあるといえるでしょう。学習する組織は、外的環境の変化をいち早く察知し、自らを新しい環境に適応させる「適応性」に優れています。そして、強い衝撃もしなやかに受け止め、回復力に優れる「しなやかな強さ」を有します。そして、自ら学び、創造し、自らをデザインし、常に進化し続ける「自己組織化」ができるのです。

変化が激しく、知識やノウハウが簡単に真似られる時代にあって、組織の学習スピードこそが、真に持続的な競争優位をつくると言われています。学習する組織は、そのような時代に、社会のニーズに応え、価値を創造し続けるための重要なモデルを提示します。

学習する組織を創る上で、バランス性の高いリーダーシップを発揮することが求められているのです。