ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

OODA

海兵隊は言葉や数値では表せない暗黙知、中でも身体に染みこんだ身体知を重視する点で日本の組織とよく似ている。言葉や数値で表せる形式知のほうを重視する欧米とは対照的だ。ここに海兵隊から学ぶべきゆえんがある。それは「知的機動力」という、現代に求められる能力にかかわる話だ。

戦いには消耗戦と機動戦がある。消耗戦は軍事力を最大限に生かして敵を物理的に壊滅させる。敵の戦力を分析し、明確な計画を立て、物量で圧倒して勝つ。トップダウンの中央集権的な階層型組織が適する。一方、機動戦は迅速な意思決定と兵力の移動・集中により、敵の弱点を突いて物理的・心理的に主導権を握る。常に変化する状況に対応するため、自律分散的なネットワーク組織が必要となる。海兵隊はこの機動戦を徹底して追求する。

変化の激しいビジネスの世界でも、価値の源泉となる知識により機動的に戦う知的機動戦が重要になっている。その際、一人ひとりに求められるのが知的機動力だ。絶えず動く現実のただ中では日々矛盾に直面する。ベストな解は誰にもわからない。そこで、その場の文脈に応じて、「よりよい(ベター)」に向かって矛盾を解消する俊敏な判断能力が重要になる。

OODAループは「観察(Observation)・情勢判断(Orientation)・意思決定(Decision)・行動(Action)」の4段階からなる。最初の観察では五感を駆使して現実をあるがままに直観し、暗黙知的に知覚する。最新の脳科学でも知覚的な情報はほとんど身体が吸収し、脳はそこからしみ出る一部の情報を認識していることが判明している。次の情勢判断では、過去の経験、自身の資質、身についた文化など自らが蓄積してきた暗黙知と新たに知覚した情報をもとに判断する。そして、対応策を意思決定し、行動に移す。

特に重要なのが「ビッグO」と呼ばれる2番目の情勢判断だ。それぞれの部分的な知を総合して全体としての概念を導き、判断する。こうして暗黙知形式知を相互変換しながら、「部分から全体へ」と総合し、概念化していくことを「暗黙的知り方」と呼ぶ。客観的な数値データをもとに「AだからB、BだからC」のように論理をたどる「分析的思考」よりはるかに俊敏に判断ができる。この過程で論理では到達できない「跳ぶ発想」が入ると創造的でイノベーティブなアイデア創発され、新しい価値や意味が生まれる。