ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

納得いくお給料の5条件

ちょうど10年前に「日経ビジネス」(2005年3月14日)において「納得できる賃金」というテーマの特集が組まれていました。その中で、「部下が納得できる賃金」の条件として以下の5つが挙げられていました。

(1)金額よりも評価の理由を明確にする

(2)個人の顔を見て成果を判断する

(3)結果を追うための過程を重視する

(4)社内比較より仕事の時価で決める

(5)安定した賃上げこそ士気を高める

 まず(1)の「金額よりも評価の理由を明確にする」ですが、経営者層や幹部社員が重視すべきは「きちんと評価をしてほしい。自分の成果を認めてほしい。」という部下の声をしっかり聞く機会を持つことだと思います。金銭的な処遇は、一時的にモチベーションをアップさせますが、他の人から「認められたい」という人間の本質を刺激する方が、より強いモチベーションにつながります。その際に重要なことは、「評価のモノサシ」を明確にすることです。会社が社員に何を求めるのか。「頑張る、努力する」とは何をすることなのか。主観ではなく客観的に判断できる基準で社員に明示することが必要です。

 ユニ・チャームにおいては「OGISM(A)表」(O:Objectives=目的、期間内に達成すべき内容とその根拠、G:Goals=数値目標、I:Issues=課題、目標達成の為(ため)に克服すべき問題点、S:Strategies=戦略、課題を解決する為に有効な対策、M:Measures=判断基準、評価の物差し、A:Action plan=行動計画)というフォーマットを活用して、具体的な達成目標と、これを獲得するためのアクション・プランを社員一人ひとりが自分で立案し、上司・同僚と共有する過程でこの「評価のモノサシ」を実行前に明確にしています。

 次は(2)の「個人の顔を見て成果を判断する」です。仕事の成果や処理能力に留まらず、人間としての成長などを、人事評価の記入用紙やシステム上でだけ判断するのではなく、本人と向き合いながら双方で共有できる環境の中で決定することが重要です。わが社でも人事部ではなく、人材開発部と命名しているように、人事評価を単なる人事処遇の手段で終わらせるのではなく、社員の育成・指導という人事評価本来の目的につなげてこそ価値があり、評価に対する納得性も高まるのだと思います。

 そして(3)の「結果を追うための過程を重視する」です。仕事の結果は個々人の努力や貢献と関係のない外的要因に左右される側面も少なくありません。従って良い場合も悪い場合も「結果」のみで評価しては、真の納得感は得られません。

 よってユニ・チャームでは思考と行動のスケジュールであるSAPS(S:Schedule、A:Action、P:Performance、S:Schedule)経営モデルの手法を活用し、あらかじめ定めた目標達成へのプロセス(手順・方法・基準・統制する仕組みなど)、つまり自分自身の意志で実行できる項目のみを追求し続けるマネジメントを志向しています。

 結果だけでなく、それに至るプロセスを評価することによって、組織に関係する全社員の納得感は高まると考えています。

 次に(4)の「社内比較より仕事の時価で決める」です。給与水準の高い、低いを何と比較して判断するかは難しい問題ですが、少なくとも同業他社、同職種の水準を目安にすることは間違いないと思います。年功制を重視するのか。いわゆる成果主義を目指すのか。それぞれの企業が考える人事のあり方よって賃金体系には大きな違いが発生しますが、その仕事の時価の範囲に収まった金額でなければ社員の納得は得られません。いずれにせよ組織に活力を与えるという目的に合致した、鮮度の高い情報を常に把握しておく必要があります。

 最後が「安定した賃上げこそ士気を高める」です。私が知る範囲ではありますが、安定して増収増益を継続している企業では、そうでない企業と比較して賃金水準はやや高いものの、人件費・労務費比率は逆にそうでない企業よりも低くなっています。この事実が意味するのは、増収増益継続企業では、人件費を有効に活用し、業績改善につなげているということです。

 ただし、これには注意が必要です。それは、経費や時間の削減に目が向き過ぎてしまい、本当に必要な経費や時間まで削ってしまうことです。その企業が世の中に対して継続して新たな付加価値を創出し続けるためには、社員一人ひとりが人間としての価値を高め続けることが肝要であり、そのためには人材育成に時間と費用を投入し続ける必要があります。

 改めてこの5つの条件を確認してみると、経営者や管理職の責任がいかに重いかがよく分かります。どんなにがんばってもなかなか結果が出ないこともあります。そんな時に、「目標が高すぎたのか」、「適切な教育やコーチングがなされたのか」、「上司からの十分な支援無く失敗し、自信を失っている状況ではないのか」などをふり返り、成果を伴わなかった真因を追求することが管理職にとって重要になります。

 そして部下も言うべきことをきちんと言える組織風土となっていて、初めて良い組織だと言えるのではないでしょうか。