多くの投資家はいまのPERはとうてい維持できず、株価は二番底に向かうと予想している。
それでも、株価が急落する事態にはいたっていない。弱気に傾く投資家心理と株価のギャップがどこから生まれるのか。1つだけ確かなのは、投資家がその弱気見通しに反して、株を大きくは売り越していないことだろう。
いまの投資家心理と株価のギャップを解き明かすキーワードがある。「Fear of Missing Out(取り残される恐怖)」の頭文字を並べた「FOMO(フォーモ)」だ。
SNSなどによってネットに常時つながっていないと社会から取り残されたような気持ちになってしまう現代人の心理状態を示す言葉だが、転じてマーケットでは株価上昇に取り残されたくない投資家心理を指す。
相場に出遅れたこうした投資家たちにとって、株価が上がり続けることは、心理的な痛みになる。
このため多くの投資家は、自らの投資判断やポジションを正当化するために、二番底がきてくれたほうがいいと考えるだろう。つまり、多くの投資家が共有しているFOMOの投資家心理が、いまのマーケットの「総弱気」の根っこにある。
こうした投資家たちは相場上昇に出遅れていることから分かるように、手元のロングポジション(買い持ち高)はそれほど大きくない。多くの投資家の弱気見通しとは裏腹に、市場にはそれほど大きな売りが出てこない。総弱気でも株価が大きくは崩れないゆえんだ。
1948年以降の米実質GDP(国内総生産)の推移をたどると、全部で11回あった景気後退局面の後には必ずV字型の回復が訪れてきた。
多くの投資家が確実視する二番底に反し、株価が上に振れる可能性もおおいにあり得る。