不動産の賃貸を始める際に、土地や建物の購入のために銀行から借入れをしていた時は、注意が必要となります。原則は、借入金の利息は必要経費に含めることができますが、不動産賃貸を開始する前の期間分の借入金利息については、資産の取得価額に含めます。
また、不動産所得の金額が赤字で、必要経費の中に土地または土地の上に存する権利を取得するための借入金利子が含まれている場合には、以下の金額は損益通算の対象とはされません。
①利子の金額>不動産所得の赤字の金額…赤字の金額
②利子の金額≦不動産所得の赤字の金額…赤字の金額のうち、利子の金額相当額
【具体例】
Aさんは、次の不動産を一括で取得し貸付けを行っています。
建物の取得費…3,000万円
土地の取得費…7,000万円
取得した際の資金は、以下の通りです。
自己資金…2,500万円
借入金…7,500万円
平成26年の不動産所得は以下のようになっており、損失が生じる見込みです。
収入金額…780万円
必要経費…1,380万円
(内、借入金利子…480万円)
差引損失額…600万円
この場合に損益通算できない金額は以下のように計算します。
①土地の分の借入金を計算する。
今回の場合、土地と建物を一括で取得していて、土地の分と建物の分を区分することができません。こういった場合には、まず建物の取得に充てられたと考えてよいという規定が用意されています。
7,500万円-3,000万円=4,500万円
②土地の分の借入金利子の金額を計算する
平成26年分の利子の合計は480万円ですので、上記でだした借入金の金額で按分すると以下のようになります。
480万円×4,500万円/7,500万円=288万円
③損益通算の対象とならない金額を計算する
②で出した288万円は、不動産所得の赤字の金額600万円以下となっています。したがって、不動産所得以外の所得と損益通算できる金額は以下のようになります。
総収入金額が100万円、土地取得に係る借入金利子が60万円、その他の経費が80万円だとすると、不動産所得の金額は100万円-60万円-80万円=-40万円の赤字になります。
この場合(借入金利子60万円>赤字40万円の場合)、土地取得に係る借入金利子に相当する部分の40万円の赤字は生じなかったものとみなされ損益通算の対象外となります。
また、総収入金額が70万円、土地取得に係る借入金利子が60万円、その他の経費が80万円だとすると、不動産所得の金額は70万円―60万円―80万円=-70万円の赤字になります。
この場合(借入金利子60万円<赤字70万円の場合)、土地取得に係る借入金利子に相当する部分の60万円の赤字は生じなかったものとみなされ損益通算の対象外となります。
つまり、土地取得の借入金利子と赤字のうち、いずれか小さい方の金額が損益通算の対象外になります。