ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

バランススコアカード

バランススコアカードとは

バランススコアカードは、従来の財務分析による業績評価に加えて、お客様の視点(顧客の視点)、業務の内容や製品のクオリティ(業務プロセスの視点)、企業のもつナレッジ(アイディア、ノウハウ)や従業員の意識・能力(成長と学習の視点)を加味した業績評価を行なうことで、企業のもつ有形資産、無形資産、未来への投資などを含めた今を総合的に評価するためのマネジメント手法です。

バランススコアカードの概要

バランススコアカードは、戦略経営のためのマネジメントシステムです。

バランススコアカードとはビジョンと戦略を明確にすることで、財務数値に表される業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質から経営を評価し、バランスのとれた業績の評価を行うための手法です。

バランススコアカードを導入することで企業ビジョンの実現・目標の達成を目指し、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの視点から戦略を立てます。その戦略を重要成功要因→業績評価指標→アクションプランと現場の業務(所属単位や個人単位)まで反映させることで、従業員は日々の業務がどのように目標達成に影響するのかを意識でき、経営陣は視覚的、実質的に目標達成までの道のりを管理することができます。

バランススコアカードを利用することで戦略の遂行状況を測りながら、企業の組織力・成長力・競争力を強化し成功へと導くことができます。


step1 ビジョンと戦略の設定
既にビジョンと戦略をもっている場合は既存のビジョンと戦略の再検討を行い、将来に向けてビジョンと戦略を再構築し、共有するきっかけとして大切なステップとなります。


step2 戦略目標の設定と戦略マップの作成
設定したビジョンと戦略を達成するための戦略目標を設定します。
次の重要成功要因の分析・作成と合わせて戦略目標を設定することで、抽象的に表されているビジョンと戦略を業績評価指標に置き換えやすくします。
また目標への道順である戦略マップを作成することで、戦略目標同士の関連付けを整理することができ、因果関係も整理できます。


step3 重要成功要因の設定
設定したビジョンと戦略または戦略目標を達成するために必要な具体的要因を考えます。バランススコアカードを成功させるためには、経営トップから従業員1人ひとりにまで設定したビジョンと戦略を浸透させることが大切です。そのためには業界、各企業、事業部、部門、課、環境要因、一時的要因など各レベルでの重要成功要因の分析・設定を行ないます。

step4 業績評価指標の設定(KPIの設定)
※KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)
KPIとは業績評価のための指標です。
設定した戦略目標・重要成功要因をどうやって評価するかを決めます。設定した重要成功要因の評価を行なうために具体的な業績評価指標を設定します。
バランススコアカードにおける業績評価指標=財務的業績評価指標ではなく、ビジョンと戦略を実現するために重要な非財務的業績評価指標(財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、成長と学習の視点における業績評価指標)についても設定します。またビジョンと戦略からアクションプランまでの因果関係はもちろんのこと業績評価指標同士の因果関係についても考慮することが重要です。
評価指標を設定により、目標が数値化されることで客観的、定量的に目に見える形となります。

step5 数値(ターゲット)の設定
設定した業績評価指標を受けて実際の数値目標を決めるターゲットの設定を行います。
ターゲット設定のページへ

step6 戦略プログラムもしくはアクションプランの策定
業績評価指標を達成するための戦略プログラムもしくはアクションプランを策定します。

step5 step6の作業は重要成功要因の設定や業績評価指標の設定と合わせて行ないます。


戦略目標
ビジョンの設定から戦略目標設定までの流れ

戦略目標
ビジョンの設定から戦略目標設定までの流れ



ビジョン・・・企業の将来のあり方を示す1つの挑戦目標です。企業のおかれた競争的なポジションや企業環境を考え合わせたうえで示した将来に対する挑戦的な目標をビジョンといいます。

例:

定量的なビジョン
「売上1兆円を目指す」(成長性)
総資産利益率5%を達成する」(利益・生産性)

定性的なビジョン
顧客満足の実現」
「事業基盤の確立」

戦略・・・戦略目標とは企業外部の環境分析、内部の経営資源分析およびSWOT分析、クロス分析により企業の強み、弱み、チャンス、脅威などを明確にした上で、事前に設定したビジョンを実現するために設定する目標です。

※SWOT分析 (スウォット分析)
強み(Strength)、弱み(Weakness)、チャンス(Opportunity)、脅威(Threat)の4つから評価する手法。
※クロス分析
強みとチャンスを生かすには・・。強みと脅威を生かすには・・などのように項目間の関連性を分析する方法。

戦略目標・・・戦略目標は比較的抽象的な言葉で表されるビジョンや戦略を業績評価指標に置き換えやすいように設定した目標です。あらかじめ設定したビジョンと戦略を具体的な言葉へ置き換えます。


戦略マップ

戦略マップは目標とビジョンを達成するためのシナリオです。
目的を達成するために落とし込まれた各アクションの因果関係や関連を図式化したものです。
戦略マップの作成は、戦略の全体像を把握することができ、戦略策定の意義を認識するために非常に有効です。
戦略マップは戦略目標だけの因果関係を記す場合が多く、戦略マップに重要成功要因を記す場合は戦略目標に関連付けて記入します。



重要成功要因 CSF:Critical Success Factor
重要成功要因とは目標と戦略の実現のために何が重要な成功要因かを明確にすることです。

重要成功要因の分析
経営者から従業員1人ひとりにまでビジョンと戦略を落とし込むために、重要成功要因分析を行ない適切な視点の洗い出しを行なうことが大切です。

重要成功要因の洗い出し手順
戦略目標を達成するための要因をできる限り多く洗い出します。
洗い出した要因の中から最も重要と考えられるものを数個選択します。
上記で選択した要因が戦略目標を実現するために因果関係があるかどうかを熟考し、重要成功要因として決定します。

決定した重要成功要因を実現することで、本当に戦略目標が達成できるかという方向から見直してみることがポイントです。

バランススコアカードにおける4つの視点の関係

財務の視点は、従業員や株主など利害関係者(ステークホルダー)の期待に応えるために、財務的目標の達成を目指します。
財務の視点を実現するために顧客の視点があります。
財務的目標の達成や顧客満足度を向上させるために業務プロセスの視点があります。
企業が競合よりも優れた業務プロセスを備え、顧客満足を図り、財務的目標を達成するために学習と成長の視点があります。
このように4つの視点は、シナリオとしての関連性があることが大きな特徴です。

財務の視点 
財務の視点とは、「財務的業績の向上のために、株主に対してどのように行動すべきか」というものです。
具体的指標(KPI)には、売上高、利益、EVA(経済付加価値)、ROE(株主資本利益率)それらのKPIの構成要素である売上高利益率、資本回転率などが挙げられます。

顧客の視点
「戦略を達成するために、顧客に対してどのように行動すべきか」という視点です。
具体的指標(KPI)には、顧客満足度、顧客定着率や対象市場におけるマーケットシェア(市場占有率)、新規顧客獲得数、クレーム発生率などが挙げられます。

顧客の視点は大きく2つの意味に分類できます。
顧客の立場からの視点
顧客志向指標
(以下の表「業績評価指標の例」・・・*印)
企業の立場から顧客を見る視点

顧客収益性指標
(以下の表「業績評価指標の例」・・・-印)

 マーケティングの立場から顧客の視点を捉える際に顧客志向の業績評価指標があげられます。ブランドエクイティを高め、顧客を獲得し、維持し、顧客満足度を高めていくというように顧客の立場に立ってどのようにして売上高や収益性を高めていくかを捉えた視点が顧客の立場からの視点になります。
 一方の企業の立場から顧客をみる視点については、顧客の視点を検討する際、財務の視点における目標を達成するために会計分野から顧客収益性を高める方法を検討しようとする傾向がみられます。具体的には、企業の顧客収益性を高めるために製品の収益性やマーケティング費用、顧客1人あたり売上高などがあげられます。
 しかし、原因から考えれば顧客志向であることによって顧客収益性の向上につながるため、実際に顧客志向指標と顧客収益性指標をを明確に区別することは難しいかもしれません。
 顧客の視点での業績評価指標の選定において、会計の立場だけでなく、マーケティングの立場からも検討することで偏りのない顧客の視点の設定をすることが重要です。



業務プロセスの視点
「株主と顧客を満足させるために、どのような業務プロセスに秀でることが求められているか」という視点です。
製造業における具体的指標(KPI)には、開発効率、在庫回転率、生産リードタイム、改善施策提案数などが挙げられます。


業務プロセスの視点は、競合他社よりどのようなプロセスに秀でていれば良いか、顧客はどのようなサービスや製品を求めているのか等、ビジョンの達成へ向けて企業の基盤を確立し、対応能力を付けるための業務プロセスを表します。

業務プロセスの視点は3つの業務プロセスから成り立っています。
イノベーション・プロセス
市場規模や顧客ニーズ、ターゲットなど顧客ニーズに合致した製品やサービスを開発・設計するプロセス
オペレーション・プロセス
製品やサービスを顧客ニーズの充足のために生産ないし提供するプロセス
アフターサービス
製品やサービスの販売ないし提供後にサービスを提供するプロセス

 業務プロセスの視点における業績評価指標は、財務の視点や顧客の視点の業績評価指標を達成するものまたは学習と成長の視点の目標となります。そのことを配慮し、最終的にビジョンと戦略を成就するような業績評価指標を設定することが重要です。


学習と成長の視点
「戦略を達成するために、どのようにして変化と改善のできる能力や環境を維持するか」という視点です。
具体的指標(KPI)には、資格保有率、従業員満足度、新技術開発数、特許出願数などの社員の能力開発や会社全体の知的資産がどれだけ蓄積されたかを表します。
学習と成長の視点で注意点は、目標設定においてその年度の実績に直接影響をするものは少なく、人材への投資や組織の活性化といった中長期的に業績へ影響していくことを期待する指標が中心になるということです。

学習と成長の視点は以下の3つに分類できます。
社員の意識
自社が社員に選ばれる企業であるかの分析し、環境やモラル等対策を講じます。
能力開発
人的資本管理をおこなうことで既存社員の持つ能力と新たに必要な能力を明確にし、人材開発方針を策定します。
ナレッジマネジメント
ナレッジ(企業や個人のアイディアやノウハウの総称)の共有や結合を行ない生産性の向上に結びつけます。
IT関連の指標をここに入れる場合もあります。

4つの視点は均等にバランスするのではなく、以下の5つのバランスを考慮し企業のビジョンや戦略に合わせて視点ごとに重みが異なります。

* 財務と非財務とのバランス
* 時間のバランス
* 要因と結果のバランス
* 内部と外部のバランス
* 利害関係者(ステークホルダー)間のバランス




最適な視点の選択
ここでは、主に4つの視点を「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」として紹介していますが、視点を4つに限定することなくその企業のビジョンと戦略の達成のために最も適した視点を選択することが大切です。

ターゲット設定
業績評価指標の設定を受けて具体的目標数値を決めます。
ターゲット設定は、重要成功要因の設定や業績評価指標の設定と合わせて行ないます。

ターゲット設定のポイント
1 ターゲット設定は、将来のビジョンや戦略を実現するための具体的数値目標となるため、チャレンジ精神に満ちた数値目標を設定します。
2 経営者は、従業員が目標を達成した際には、満足感や達成感の実感ができるような仕組み作りが必要です。
3 初めから達成しやすい数値を設定し、それをクリアすればよいといった組織風土、社風、雰囲気にならないようにします。



アクションプラン、戦略プログラムの作成
将来のあるべき姿であるビジョンと戦略の実現に向けて、数年先を見据えて設定したターゲットを(数値目標)を実現するために、戦略プログラム(施策)、アクションプランに落とし込みます。これにより作成した戦略プログラムないしアクションプランは、PDCAを確実にし、戦略および戦略目標を実現させることができます。
戦略プログラムもしくはアクションプランの作成では、既存の経営管理プロジェクト(*)と協調し、年度予算や中期計画などの経営計画にもリンクさせることが必須条件となります。


BSCの運用 PDCA
初期段階のBSCの設計の後、BSCの運用に入ります。
BSCは、組織的、人事的、コミュニケーション他経営革新のさまざまな可能性をもっています。BSC運用において、掲げたビジョンの達成を目的に持続的できめこまやかにPDCAサイクルを回すことが重要です。

BSC運用の3ステップ

1. アクションプランの実行
2. 実行結果の分析と報告
3. BSCモデルの継続的なブラッシュアップ

KPI達成のために定義されたアクションプランが日常レベルに落とし込まれ、日々実行されていきます。アクションプランの実施状況や実行結果をあらわす先行指標でモニタリングをおこないます。モニタリングは、月次(業種・業態により週次、日次)単位でおこない、さらに四半期、年度単位でKPI達成状況の評価をすることで戦略の達成状況の評価・分析を行います。戦略の達成状況、因果関係、方向性などを検討しBSCの見直し、修正を行い自社にとって精度の高い BSCへとブラッシュアップしていきます。