損益分岐点分析(CVP分析)とは、原価・営業量・利益(Cost/Volume/Profit)
の相関関係を分析すること
損益分岐点の計算方法
商売の初歩的な公式「売上額=利益+経費」の考え方を発展させて
「売上額=利益+固定費+変動費」
とすることが損益分岐点計算の基本となる。つまり多種類ある経費を毎月安定して必要となる「固定経費」と、売上額の増減に比例して必要となる「変動経費」に分けて考えるのだ。
<固定費とは>
一度増加してしまえばその後の売上高や生産量の変動に関係なく必要となる費用のことを指し、会社設立からの時間が経過していく毎に増加していく傾向がある。正社員の人件費を中心として家賃、広告宣伝費、火災保険料、接待交際費、交通費などがある。
<変動費とは>
売上高や生産量が増えれば増加するが、逆に低下すれば同じように低下する費用のことを指す。原材料費、外注費、仕入原価、支払運賃、包装費、歩合制賃金などがある。
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売上高、費用(変動費と固定費)、利益との関係。
これらの関係を式で表すと
売上高=変動費+限界利益
限界利益=売上高−変動費
限界利益=固定費+利益
損益分岐点=変動費+限界利益(=固定費)
※利益=0の場合
この関係から売上高に対する変動費の割合(変動費率)がわかれば限界利益の割合(限界利益率)もわかります。
限界利益率=1−(変動費÷売上高)
「限界利益=固定費」の場合が、損益分岐点なので
損益分岐点×限界利益率=固定費
↓
損益分岐点=固定費÷限界利益率
損益分岐点=固定費÷(1−(変動費÷売上高))
この式を使えば、簡単に損益分岐点を計算できます。
例:固定費=25 変動費=100 売上高=200
答:損益分岐点=25÷(1−(100÷200))=50
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┌─ 損益分岐点の算出公式
│
│ 固定費
│ [損益分岐点]= ─────────
│ 変動費
│ 1− ─────
│ 売上高
└─
企業の損益分岐点分析
企業や部門に対して損益分岐点分析を適用する場合は,横軸の変数は売上高を取った方が分かりやすい。この場合の変動費は,売上高に対する変動費率を使う。
費用を固定費と変動費に分解することを「固変分解」というが,企業や組織単位で発生する費用は,必ずしも固定費と変動費にきれいに分けられないので,固変分解は実務的にはなかなか難しい。
よく使われる方法は,勘定科目毎に変動費と固定費を決め打ちする「勘定科目法」と呼ばれる方法だ。例えば,製造業における製造原価であれば,直接材料費のみが変動費で,それ以外の費用はすべて固定費とする。非製造業であれば,ほとんどが固定費と言っていいだろう。
他の方法としては,売上と費用の月次又は年次推移から,最小自乗法により回帰直線を求める方法がある。回帰直線のy切片が固定費であり,傾きが変動費率である。
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A)個別費用法・・・勘定科目毎に性格をみて、変動費と固定費に分解します。
<手順>
①ベテランの経理マン数人で、勘定科目ごとに変動費か固定費かを判断する。
②一致する科目については、変動費か固定費とする。
③何度やっても、不一致の科目については、準変動費とし、
B)以降の方法で固定費と変動費に分ける。
④以上の結果を区分表にして、ルール化する。
⑤何度か改訂をして、より実態に合わせるようにする。
この方法は、実務的で、広く使われています。
B)総費用法・・・2期の売上高と総費用を使って、算出します。
(当期総費用−前期総費用)÷(当期売上高−前期売上高)=変動費率
売上高×変動費率=変動費
当期総費用−変動費=固定費
例:当期総費用=125 前期総費用=100
当期売上高=200 前期売上高=150
(125−100)÷(200−150)=0.5・・・変動費率
200×0.5=100・・・当月変動費
25−100=25・・・・固定費
C)最小自乗法・・・次の連立方程式で算出します。
売上高・・x 総費用・・y 年また月数・・n 固定費・・a 変動費率・・b
Σy=na+bΣx
Σxy=aΣx+bΣx2
例:当期総費用=125 前期総費用=100 当期売上高=200
前期売上高=150 年数=2
125+100=a×2+b×(200+150)
125×200+100×150=a×(200+150)+b×(2002
+1502)
↓
b×1250=625 b=0.5・・・変動費率
a×2=125+100−0.5×(200+150)
a=25・・・固定費 125−25=100・・・当月変動費
<手順>
①費用と売上高で、散布図を作成します。
②これらの点とバランスをとるような直線を引きます。
③この直線と費用を示す縦軸との交差する点が、固定費の額を意味します。
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変動費中心型と固定費中心型
相対的な分類であるが,企業は,固定費は比較的小さいが変動費率が大きい「変動費中心型」と,固定費は比較的大きいが変動費率が小さい「固定費中心型」に分けることができる。
前者は,商品の売買を行う流通業や,直接材料費比率の大きい製造業などが該当するだろう。IT系企業で言えば,ハードウエアの販売を行っている企業は,相対的に変動費が高いはずだ。
後者は,人件費比率の大きいサービス業や,製造原価はそれほどでもないが莫大な研究開発費がかかる医薬品メーカーなどが該当するだろう。IT系企業で言えば,ソフトウエア開発などのサービス提供が主体の企業は,相対的に固定費中心型といえるだろう。
変動費中心型の企業の場合は,損益分岐点が小さいので,利益は出やすい。ただし,損益分岐点を超えた後も,変動費率が高いために,それほど大きな利益が得られるわけではない。逆に言えば,損益分岐点を下回ったときでも,それほど大きな損失になることもない。したがって,変動費中心型の企業は,ローリスク・ローリターンといえる。
一方,固定費中心型の企業の場合は,損益分岐点が大きいので,利益が出るまでに相当の売上規模が必要になる。ただし,損益分岐点を超えれば,変動費率が小さいために,大きな利益が出るようになる。しかし,これは諸刃の剣で,損益分岐点を下回ったときは,急激に利益がマイナスになる。したがって,固定費中心型の企業は,ハイリスク・ハイリターンといえる。
安全余裕率
=(売上高−損益分析点)÷売上高
上式のように、安全余裕率は「売上高より損益分岐点を引いた数値」を「売上高」で割ることによって求めます。
安全余裕率は、具体的には「採算ラインをどの位上回る程度の売上の余裕があるか」を確認する指標なので、高ければ高いほど良い指標と言えます。
目安としては、安全余裕率が25%から30%を上回るなら非常に良好、反対に5%以下の場合は危険な状態であると言えるでしょう。
【目標利益を達成するために必要な売上高】
損益分岐点とは、損益の分かれ目(0)になる売上高のことです。
売上高−変動費−固定費=0(利益)となるときの売上高です。
損益分岐点の場合、
売上高=変動費+固定費 そして、売上高−変動費=固定費となります。
よって、費用(変動費+固定費)と売上高が等しくなる場合、そして限界利益(売上高−変動費)が固定費と等しくなる場合が、損益分岐点の売上高となるわけです。
さらに、限界利益=売上高×限界利益率であることを踏まえれば、
限界利益(売上高−変動費)=固定費 → 売上高×限界利益率=固定費となり、
結果、損益分岐点売上高について
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率 で求めることができるわけです。
目標となる利益を出すための売上高の算出は、
売上高−変動費−固定費=目標利益 → 売上高×限界利益率=固定費+目標利益となり
結果、目標利益達成売上高について
☆目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)÷限界利益率
で求められるのです。
以上が損益分岐点の概略ですが、この損益分岐点を把握することにより、売上高と費用(変動費・固定費)の関係を分析することができ、目標利益を獲得するための計画策定がはじめて可能となるのです。