ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

ROAとROE

経営分析は、収益性分析,安全性分析,生産性分析,成長性分析,株主関連指標分析に分類される。

ROEROEは収益性分析のうちのひとつ


■収益性分析

ROAROEの定義式はそれぞれ以下のようになっている。

ROA = 事業利益/総資本 = (経常利益 + 支払利息)/総資本

ROE当期純利益 /株主資本

ROAROEの定義

 それぞれの式を見ると,ごていねいに分子も分母も異なっている。だからと言って,間違ってもこの式を覚えようとしてはいけない。覚えようとしても,どうせ忘れる。やるべきことは,分母と分子がなぜこうなのかという理由を「理解」することである。そうすれば,無理に覚えようとしなくても,自然と思い出せるようになるはずだ(注1)。
ROAである。これは企業の収益性を総合的に見る指標であり,最も基本となる収益性指標だ。言葉を換えれば,「会社全体の平均的な儲ける力=まぐれを除いた真の実力」を見ようとするものである。

 「会社全体」なので,誰が資本を投下したかは問わず,資本の総額である総資本(負債+資本)を用いる。そして,分子にはこの総資本が生み出す利益を対応付ける。

 では,総資本が生み出す利益とは何だろうか。調達された総資本(貸借対照表の右側)は,さまざまな資産の集合体である総資産(貸借対照表の左側)になる。総資産とは,会社全体の仕組みそのものだ。会社の仕組み(=総資産)が「平均的に」生み出す利益とは,特別な場合を除いた会社にとってのコンスタントな利益,すなわち経常利益である。

 ただし,経常利益には支払利息も織り込まれている(注2)。支払利息は資産が原因で発生する費用ではなく,調達資本の一部である負債が原因になって発生する費用だ。支払利息の額を決める負債の大小は,資金調達方法の差異であって,会社の仕組み(=総資産)が儲ける力とは異なる。

 そこで,経常利益の計算過程で控除された支払利息を利益に足し戻したものを,新たに「事業利益」と定義。この事業利益をROAの分子に用いる。事業利益は,支払利息の影響を除いた,すなわち,資本調達方法に左右されない「平均的な利益」ということができる。

 なお,事業利益という概念は制度上の損益計算書には存在しないため,情報として入手しにくい。そこで,実務上は事業利益の代わりに経常利益や営業利益を使うことも多いが,それらはあくまでも簡便的な方法であることを知っておこう。


ROEは株主から見た収益性指標

 もう1つの収益性の指標であるROEは,株主から見た収益性だ。したがって,分母には株主に帰属する資本である株主資本を用いる。

 これに対して,分子には株主にとって意味のある利益を対応付ける。それは,税引後の当期純利益だ。株主の関心事は,極論すると,自分が投資した企業から,どれだけの経済的リターンがあるかということに尽きる。投資したことに伴う経済的リターンは,配当に代表されるが,その原資となるのはいずれも税引後の当期純利益である(注3)。

 営業利益や経常利益などの途中経過は,株主にとってはどうでもいいことだ。「結局のところ,いくらの経済的リターンをもたらしてくれるんですか」という株主の問いに直接的に答える当期利益にこそ,株主の関心はある。そのため,ROEの分子には税引後の当期利益を用いるのである。


ROAが一定なら負債比率高い方がROEには有利

 皆さんは,ROAROEのどちらをよく見聞きするだろうか。筆者は,おそらくROEではないかと思う。ROEは株主から見た収益性,すなわち,株主に対してどれだけ利益還元するかを見る指標といえるので,株主重視という最近のトレンドに合致するからだろう。

 
(注1)少々細かい話であるが,分子の利益は期末時点の損益計算書の値をそのまま使うが,分母の総資本や株主資本は期首と期末の平均値を使う。利益は1年間の期間情報(フロー)であるが,分母の投下資本は期末における時点情報(ストック)なので,そのままでは分子と分母の対応する期間が整合しないからだ。そこで,分母の投下資本は期首(=前期末)と期末の平均値を使って,近似的に分子と分母を対応させるのである

(注2)有利子負債が原因で発生する支払利息全般。従って,社債が原因となって発生する社債利息も含む

(注3)ROEの定義式の中には,分子を「当期利益」と書いてある文献もあるため,税引前か税引後か迷うかもしれない。しかし,配当原資になるのは税引後の最後の最後の利益なので,それを理解していれば自ずと税引後であることが分かるだろう


ROAは売上高事業利益率と総資本利益率に分解される

上記の第1項は,売上高事業利益率と呼ばれる。これは,ROAのうち損益計算書(P/L)に起因する部分だ。損益計算書は単年度ごとのパフォーマンスを表すものであり,言葉を換えれば,第1項の売上高事業利益率は単年度ごとの短期のパフォーマンスに起因する部分と言える。

「売上に貢献しないコストを削減し,売上に貢献するコストを増加させる」という考え方だ。多くの企業は,二言目には「コスト削減」と言うが,本当にすべてのコストを削減したら,企業は富を生み出さなくなり,明日はない。重要なのは,「あそこにコストを掛けたいから,ここのコストを削減する」という「コストの最適配分」という考えだ。これが,「売上高事業利益率は売上高とコストの“兼ね合いで決まる”」の意味するところである。

 ROAを分解した式の第2項である売上高/総資本は,総資本回転率と呼ばれる。回転率なので,習慣的に百分率にせず,単位は「回」を用いる。

総資本回転率が高いほど資金の回収スピードは速いのでカネ回りは良く,総資本回転率が低いほど資金の回収スピードは遅いのでカネ回りは悪いということになる。第1項の売上高事業利益率が単年度に限ったパフォーマンスを表しているのに対し,第2項の総資本回転率は,複数年度に渡る長期の要因に起因する部分を表しているといえる。

 総資本回転率は,その企業が売上を獲得するのに,どれだけの総資本,すなわち“体格”を必要とするのかに大きく依存する。例えば,大掛かりな設備投資や巨大な装置が必要で,それを何年も使って売上を稼ぐような重厚長大ビジネスの場合は,大きな体格を必要とするため,どうしてもカネ回りは悪く,総資本回転率は低くなる。一方,大きな設備投資を必要とせず,商品を仕入れて売るだけの卸売りや小売業の場合は,スリムな体格でビジネスができるので,カネ回りはよく,総資本回転率は高くなる。