●事業再生ADRとは
・第三者(ADR)が入って、債務者と金融機関の調整を行う仕組みで、倒産スキームの5類型(下記参照)のうちの1つ。
・ADRはAlternative Dispute Resolution(裁判外紛争解決手段)の略。「裁判所」でなく「当事者間」で問題解決を目指す手続の総称。
・法務大臣の認可を受け、さらに産業活力再生特別措置法(産活法)に適合していると認められれば、経済産業大臣から事業再生ADRの認定を受けられる。
手続きの流れ
ADR.pdf
●倒産スキームの5類型
<清算型>
(1)破産法:債務者の財産を換価して破産債権者に配当する、最もシンプルな仕組み
(2)特別清算:破産以外で企業の解散を選択した場合において債務超過である場合
<再生型>
(3)民事再生法:倒産法申請前の経営者が経営権を保持し続けるかたちで運営できることと、コストが会社更生法に比べて安いのがメリット(再生にかかる期間は民事再生が原則10年、会社更生が20年以内)
(4)会社更生法:より裁判所の関与が大きく、経営陣の責任が明確である点で債権者にとっての利点が大きい。担保権の実行についての別除権がない。
(5)事業再生ADR:法的手続ではなく任意手続。あくまで債権者にとって経済合理性が期待できる範囲で柔軟な再生計画を進めるもの。これまでも私的整理は存在したが、2007年のADR法施行によりその後継となった。
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事業再生ADRの事業者は裁判所のような公的機関ではないので、事業再生ADRも「私的整理」の一類型と位置づけられます。すなわち、債権者集会で全債権者の同意を得なければ計画実施に至りません。ただし、かつての「私的整理ガイドライン」のようにメインバンクが主導して弁済計画を作成する手続ではありません。対象となる債権者(金融機関等の大口債権者)へ「一時停止通知」を発して債権回収や担保設定行為を禁止した上で、債務調整の協議への参加を呼びかけて、債権者会議で選任される「手続実施者」(事業再生実務家協会の会員から推薦される)のアドバイスを受けて債務者が再生計画案を策定します。そして、手続実施者が公正中立的な立場から債権者間の調整を行ったり再生計画案の調査報告書を提出します。このように手続に公的な色彩があるため、金融機関を中心とした手続対象債権者の同意が得やすいというメリットがあるのです。
一般の私的整理では、金融機関から弁済の猶予や債務免除を受けたくても、当事者間の話し合いになるため、なかなか金融機関の同意を受けられないのが実際です。
かといって、法的整理(民事再生など)を利用すると、金融機関以外の取引先も「債権者」として手続に加えなければなければならないため(当然、取引先の債権もカットされることになる)、取引先が離れていき、本業で利益をあげることが困難になり、事業再生の実をあげられなくなってしまうおそれがあります。
そこで、私的整理のメリット(金融機関等の主要債権者のみを相手として個別の取引はそのまま続けられる)を残しつつ、法的整理に近い手続の信頼性を付与することで金融機関等の主要債権者の同意を得やすくしようというのが、事業再生ADRです。