ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

ティッピング・ポイント

なぜ、ニューヨーク市の犯罪率が急激にダウンしたのか?
 なぜ、地味な靴「ハッシュパピー」は爆発的に売れ出したのか?
 なぜ、『セサミ・ストリート』は人気長寿番組になりえたのか?
 なぜ、無名作家の小説が一躍ベストセラーになったのか?
 なぜ、急成長ハイテック企業ゴア社は<150人の組織>に固執するのか?
 なぜ、ボルティモア市の梅毒感染率は1年間で5倍に増えたのか?
 全ての秘密を解く鍵は「ティッピング・ポイント」にあることを本書では、述べている。
 ティッピング・ポイント(THE TIPPING POINT)とは、あるアイデアや流行もしくは社会的行動が、敷居を超えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間のことである。
 ちょうど、混雑した店にいる一人の患者がインフルエンザの蔓延を引き起こさせるように、小さいがツボを心得たひと押しもまた、一夜にして新たな流行を生んだり、たとえば犯罪率を低下させたりするきっかけになる。また、製品や考え方にごくわずかな修正を加えるだけで、それが爆発的な人気を呼ぶ見込みはぐんと高まる。そして、身近な環境変化の小さな変化によって集団行動を望ましい方向に「傾ける」のが、いかに簡単であるかを明らかにしている(落書きを消したら犯罪が激減したという、NYの地下鉄の有名な一件がそうであるように)。われわれは、大きな成果を上げるには大変な努力が必要だと考えがちである。本書が言わんとしているのは、機略に富む人間が力の入れどころをわきまえれて梃子を使えば、ひとりでも世界を動かせる、ということである。
 
 本書は、今まで読んだ本の中では、非常にユニークな考えのもので、示唆に富むものである。一読を勧めます。以下、概要を示す。
(1)ティッピング・ポイントの特徴
 ①感染的である
 ②小さな原因が大きな結果をもたらす
 ③変化は徐々にではなく劇的に生じる(感染の勢いはある劇的な瞬間に上昇したり下降したりすることがある)
 
(2)爆発的感染、その3原則
 ①少数者の法則:特定の少数者がとりわけ重要な役割を果たしている(例:イースト・ヴィレッジの一握りの若者がハッシュパピー流行のきっかけをつくり、ごく限定された住宅建設地域に住むごく少数の人々がボルティモアの梅毒感染問題の口火を切ったということ)
 ②粘りの要素:HIV感染が1980年代に一気に広がったのは、以前からあったHIVウイルスが変化した。すなわち、ひとたび感染すると、そのまま粘りつくようになった。粘りの重要性は、メッセージをより感染性の強いものにするにはどうしたらよいか、製品やアイデアをより多くの人に届けるにはどうすればいいか。そのために、あるメッセージが頭にこびりついて離れなくなる。つまり、記憶に粘りつくことが大切。
 ③背景の力:伝染病が背景(環境の条件や特殊性)に大きく左右されること。人間は自分で思っている以上に環境に敏感であること。
 
(3)「80対20の法則」から「少数者の法則」:感染をスタートさせる特別な人々
 ①コネクター(媒介者):世界を束ねるような特殊な才能を持っている人
 ・知り合いが多く、顔が広い
 ・どんなグループにも他のメンバーより4倍から5倍の交際範囲の広い人がいる(どんな人の人生経路にも、友人や知人を作る並はずれたコツを体得している一握りの人がいる)
 ・コネクターに関する重要な点は、彼らが非常に多くの世界を股にかけることによって、それらを結び合わせる働きをしていること
 ・コネクターは私たちと同じ世界を見ているのではない。この人たちは可能性を見ている。
 ・コネクター弱い絆の達人)は、社会的力が強いので、新しい機会を得ようとするとき、彼らの力を借りる。
 ・発想なり製品なりがコネクターに近づけば近づくほど、力と機会が増える。
 ・口コミ伝染はコネクターの仕事である。
 ・社会的にかわの役割をはたす。
 ②メイヴン(通人):知識を蓄える人
 ・彼らは受け身の情報収集家ではない。どうすればよい買い物ができることがわかったら、それを他人に教えたがっている。
 ・「コンシューマ・レポート」(商品テスト専門誌)を熱烈に愛読するタイプの人。
 ・他人の問題を解決することによって、自分の問題(自分の感情的必然性)を解決している人。
 ・口コミによる伝染を始動させるための知識と社交的技術が備わっている。
 ・データバンクの役割をはたす。
 ③セールスマン:説得のプロ
 ・私たちが自分の耳にした情報を納得しないとき、それを説得する技術を持った選ばれたグループ。
 ・セールスマンには、その口から出る言葉を超えた何か強力な伝染性を持つ抗しがたいものがある(エネルギー、情熱、魅力、人懐っこさ、その全てであり、それ以上のもの)
 ・説得における特徴
  −一見すると些細なことでが大きな違いになる(ヘッドフォンを付けた実験で、頭を上下に振れば、頭を動かさないよりもずっと説得力を持つ)
  −何かを語るときそれを取り巻いている状況の方が、語られる内容よりも重要になる場合がある
  −説得というものが自分たちの与り知らないとことで作用する
 ・感情は外から内に伝染(あなたを笑わせることができるなら、私はあなたを幸せにすることができる。険しい顔にすることができれば、悲しい気分にさせることもできる)
 ・感情や気分を上手に表現できる人は、他の人よりもはるかに感情の伝染力が強い。
 ・カリスマ的な人だけが自分の感情を相手に感染させることができる。
 
(4)粘りの要素:情報を記憶に残すための、単純かつ決定的な工夫
 ・「セサミ・ストリート」は、一転突破の洞察から成り立っている。それは、子供の注意を引き続けることができれば、教育になるという考え方だ。
 ・大人はとかく繰り返しは退屈だと考える。就学前の子供たちにとっては、繰り返しを見るたびにまったく違う受け止め方をしている(例:同じアルファベットの名称を繰り返すと、最初は文字の名称を学び、次にその名称と形を結びつけ、さらにあは文字の繋がりを学ぶ)。繰り返しによる学習という発想をジェームズ・アール・ショーンズ効果と呼ぶ。

(5)背景の力:人の性格に感染する背景
 ・感染は、それが起こる時と場所の条件と状態に敏感に反映する。
 ・「割れた窓」と呼ばれる理論:割れたまま修理されない窓、落書きや風紀の乱れ、あつかましい物乞いなど、比較的些細な問題は、より深刻な犯罪の呼び水になる。
 ・犯罪を解決するには大問題を解決する必要はない。落書きを消し、無賃乗車を取り締まるだけで犯罪は防止できる。
 ・聖職者でも急がせれば、困った人を助けない行儀の悪い市民になる。
 
(6)「150の法則」という背景:人の行動に感染する効果的な集団の規模
 ・小規模で緊密なグループには、あるメッセージなり発想なりが持つ潜在的感染力を強化する力がある。
 ・150人以下のグループであれば、規範なしでも同じ目標を達成することができる。
 ・150人を超えると、大きな問題が発生する。このため、ゴア・アソシエイツ社は、150人以下になるように、部門を分割する戦略を取っている。