ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

スマイルカーブ理論

台湾のパソコンメーカー、宏碁(エイサー)の創業者の施振栄(スタン・シー)氏が唱えたスマイルカーブ理論だ。製品の開発から販売に至る流れを横軸とし、その付加価値を縦軸にして線を描くと、真ん中の組み立て事業の価値が一番低い曲線になる。曲線が笑っている口のように見えることからスマイルカーブと呼んだ。

 施氏は自ら唱えた理論に沿って1990年代に半導体、液晶、ソフトウエアなど上流部門に進出し、その一方でネット販売や電子商取引など下流部門にも触手を伸ばし利益を高めようとした。だが、世界の有力企業との競争で追い詰められ、上流、下流のほとんどの事業が行き詰まった。最後はパソコン組み立て事業も分離し、エイサーは工場を持たないマーケティング会社として生き残った。

 そのスマイルカーブ理論に抗して業績を伸ばしてきたのが鴻海だった。投資リスクが少ない中流の組み立て部門に事業を特化し、大規模化することで毎年1千億円を上回る営業利益を上げてきた。逆に、付加価値が高いはずのマーケティングに特化したエイサーは昨年、赤字に転落している。

 エイサーが実践したスマイルカーブ理論をなぞるかのように、鴻海は今、上流、下流へと事業を広げようとしている。上流や下流は確かに付加価値が高いが、競争も激しい。半導体や液晶、研究開発などの上流事業は巨額の資金を必要とし、下流に位置するブランドビジネスも多額の広告宣伝費がかかる。

 つまり上流、下流は投資リスクが高い分だけ付加価値が高いのだ。案の定、鴻海が傘下に入れた液晶パネル世界3位の奇美電子は予想以上の世界景気の減速を受けて赤字が続く。下流分野の量販店やネット販売も利益に寄与しているとの話も聞かない。とはいえ、中国の人件費上昇を考えればビジネスモデルの転換は不可避だ。鴻海は試行錯誤を繰り返しながら上流、下流に事業を拡大していくしかないのだろう。