ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

ファシリテーション、ファシリテーターとは

 元気がないといわれる昨今の日本企業。「できない理由を見つけるのが上手い」「目的のはっきりしない会議が多い」「意思決定に時間がかかる」。あなたの職場に当てはまるものはあるだろうか?

 長年にわたって組織のコンサルティングを手掛けてきた森氏によれば、元気のない組織には共通する「悪しき生活習慣」があるという。逆もまたしかり。元気な組織は「スピードに富み」「迅速に意思決定を行い」「素早く行動する」という生活習慣を持っている場合が多い。

しかし、悪い生活習慣を改めるのが難しいことも事実だ。そこで森氏が提案するのが「ファシリテーションを使った組織トレーニング」である。ファシリテーションとはコミュニケーションスキルの一つ。チームの一人ひとりに自ら考えさせることで、動機付けを与え、チームワークを醸成し、活力のある組織へと改革する技術を指す。

ファシリテーションの目的は「自分で考えさせること」。それによって人は自ら解決策を見いだし、自発的に取り組むようになる。重要なのは「共有すること」だ。例えば、震災以降、事業継続計画の策定が各企業で進められている。しかし、経営層などの一握りの人間が議論したプランを全社に浸透させることは難しい。では、どうするか。ポイントは、全社員に情報を共有し、当事者意識を持たせること。一人ひとりが問題を抽出し、課題として捉え、全員で共有する。その上で解決策を議論すれば、理解が深まるし、組織としての結束力も高まっていく。

 そんなファシリテーションを使えば、組織の「悪い生活習慣」の変革も可能だ。まずは、メンバー全員で組織行動の課題を抽出する。深刻さや優先度の高いものを洗い出したリストからいくつかピックアップする(3〜5個程度)。その後、各課題に対処するためのルールを策定する。例えば、「行動力がない」「目線が低い」という課題を洗い出した場合は、「すぐに反応する」「常に一歩先をめざす」といったルールが導き出されるだろう。ルールは、皆で守るべき「憲法」とする。違反者にはイエローカードを出したり、少額の罰金を課したりするなど、ゲーム感覚で運営すれば定着も早いだろう。重要なのは、自ら課題意識を持ち、解決策を考えるという過程を辿ることである。

 ここまで述べてきた改革を推進するために必要なもの。それは「リーダーシップ」である。それは、一般的に想像される上位下達型の「ハード・リーダーシップ」ではなく、人を動機付けて動かす「ソフト・リーダーシップ」だ。異なる価値観を受け入れられる「ダイバーシティ」、回りを巻き込み、関心を抱かせる「インタラクティブ」、新しいアイディアにも拒絶反応を示さない「オープン」などを兼ね備えて、人を内発的な動機によって動かす。

 「ソフト・リーダーシップ」が求められる背景には、グローバル化により人やモノの移動が容易になったこと。その結果として、社会環境の多様化が拡大していることがある。情報流通のあり方も大きく変わった。もはや、かつてのように情報をコントロールすることで権威を保つことは難しくなった。自分達にとって都合の悪い情報を隠蔽することは簡単ではない。むしろ、開示して存在をアピールする方が賢明な場合が多い。不連続で予測不能な時代には、権威を背景にした中央集権型よりも、分散したものを自由に組み合わせて化学変化を期待する方が時代に即していると言えるだろう。

 意思決定が中央集権型から自律分散型に変わると、指示待ち体質から脱却し、スピーディに活動できるようになる。自立分散型の組織を実現するためには、リーダーがファシリテーション能力を備えていることが求められる。課題に即したアプリケーションスペシフィックプログラムも必要だ。もちろんITの支援も有効だろう。

 ITによる「見える化」は、人の動機付けに大きく貢献する。例えば、企業活動が一目瞭然に分かる「コックピット」を経営層が毎日のように閲覧し、状況認識を共有している企業ではよりスピーディで的確な意思決定が可能になるだろう。人間は、何らかの評価をもとに行動を変えるという特性を持っている。例えば、顧客企業の組織図に描いてキーパーソンをマッピング。さらに、意思決定力や仲の良さなどを定量化して書き込めば、どの人物にどのようなアプローチするべきかが視覚的に理解できる。そうなれば営業担当者の行動も変わってくるだろう。

 「厳しい時代だが、組織独自のコアバリューにこだわろう。ファシリテーションを活用した組織トレーニングで生活習慣を改善し、歯を食いしばって成果をあげ続けていこう。あくまで楽観的に」。それが森氏からのアドバイスだ。

“結果”の出ない組織はこう変えろ! ファシリテーションの応用と実践

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