ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

プレとポスト “Pre Money Valuation”と“Post Money Valuation”

ベンチャーファイナンスを理解するために必要な計算について、なるべくわかりやすく順序立てて説明したいと思います。

まずは、最も基礎的なバリュエーションと1株当たり価格からご説明します。

ベンチャーファイナンスのバリュエーションタームには“Pre Money Valuation”と“Post Money Valuation”という2つの言葉が出てきます。

“Pre Money Valuation”とは、新規投資がなされる前の企業価値をいい、“Post Money Valuation”とは、新規投資によりニューマネーが入った後の企業価値をいいます。つまり、
Post Money Valuation = Pre Money Valuation + New Money
ということになります。


新規投資に当たって投資家と創業者が交渉するのは、Pre Money Valuationです。投資の時点で対象企業の企業価値をいくらと判断するのか、例えば企業のキャッシュフローの予測と割引率から算出することになります。こうしてPre Money Valuationが決定すると、これを投資前の総株式数で割ったものが、その時点の対象企業の1株当たりの価格ということになります。

これが投資時の1株当たり引受価格です。

通常は企業サイドが各ラウンドで調達が必要な額があるはずなので、これを所与として、これに応じられる投資家、または複数の投資家を代表して取引をまとめるリードインベスターとの間でPre Moneyを交渉することで、1株あたりの引受価格が決まり、更に発行する株式数が決まっていくことになります。創業者は、投資後の自らの持株比率をにらみながらPre Moneyの交渉にあたることになります。

なお、ここで「総株数」として考えるのは、通常潜在株式すべての稀釈化後、種類株式すべてが普通株式に転換後の総株数です。つまり、
Pre Money Valuation ÷ 希釈化後総株式数 = 投資時の1株当たり引受価格
ということになります。

Pre money(バリュエーション)とは、本ラウンドでの評価株価×VC投資前の発行済み株式数で算出される株主価値である。このPre moneyに投資額が加算された額がPost moneyである。

下記のベンチャーキャピタルメソッドは、Post moneyの算出方法である。


ベンチャーキャピタルメソッド
ベンチャー企業はいわゆる上場企業のバリュエーション方法は使いにくい。その理由は、

PERマルチプルで算出したくても、赤字なのでできない
DCF法を計算したくても収益計画が不確実すぎて、納得感がない
よく使われるのがベンチャーメソッドと言われる方法。簡単に言うと、上場時に得られる金額を投資時現在に割り引いて現在の株価を算出する方法である。

この方法はVCだけでなく、バイアウト系ファンドでも使用されている。この方法が好まれる理由は、ファンドにとって、当該企業の本質価値はさておき実際いくらでEXITできそうか、という点にフォーカスされている、計算がシンプル、があると思われる。

それで、次に問題になるのが割引率。
どのように割引率を決めているかというと、VCがそのベンチャーの株主価値が何倍になってもらいたいか=IRR、という期待利回りを割引率として使う。

VCは、ファンド全体として、20%のIRRが期待されているといわれている(たぶんこれは高すぎ。実際は10%=10年で2.5倍)。これを聞くと、ではそれぞれのベンチャー企業への投資もIRR20%が期待されている、と勘違いする人がいるが、あくまで「全体で」ということで、それぞれはばらつきがある。VCのEXIT確率はおよそ10〜20%と言われている。10件投資したら、1,2件しかIPOできない、ということだ。つまり、この1,2件のリターンがファンド全体の稼ぎ頭となる。なので、個別のベンチャー企業への投資に期待される利回りは当然20%以上となる。

だいたいの相場観で言うと、各ステージの割引率はこのくらいかと思われる。もちろん個別案件にも大きく依存する(イケそうな企業の割引率は小さめに)。

シード:50%
シリーズA:30%
ミドル・レイター:20%

IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)とは、投資によって得られると見込まれる利回りと、本来得るべき利回りを比較し、その大小により判断する手法のこと。 IRRとは、投資プロジェクトの正味現在価値(NPV)がゼロとなる割引率のことをいう。