ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

「ブランドの定義書」定義書に書くべき8つの項目とは

もの作りでもサービスでも、ブランドマネジメントをする企業の多くはブランドを定義するフォーマットを持っている。一社に複数のフォーマットが存在することもあるが、フォーマットは共通言語なので統一した方がいい。手元に「ブランドホロタイプ・モデル」と呼ぶフォーマットがあるので、これを基に概要を見てみよう。ちなみに、ホロタイプというのは生物種の名前のよりどころとなる正基準標本のことである。ブランドホロタイプとしてブランドの正基準標本となる要素を定義することで、多面的な活動に一貫性を保ちやすくなる。

(1)大義:ブランドが何のために存在しているのかを示し、4つの具体的な要素を内包する。まずは「Vision」で、ブランドの理念と理解してもいい。ブランドが実現したい世界を描写する。ついで「Mission」は、Visionを達成する際にブランドが担うべき使命を示す。そしてMissionを達成する際に尊重すべき行動様式や価値観を「Value」として明記すると、ブランドの活動に人格的な一貫性を保ちやすい。もし複数ブランドをポートフォリオで管理しているなら、ブランド固有の役割を「Role」として記述しておくと、他のブランドと連携しやすくなる。

(2)市場/競合:2つの視点から記述する。1つは一般的な「製品カテゴリー市場」で、万年筆市場、筆記具市場などがこれに当たる。もう1つは「ベネフィット市場」で、ジョブやベネフィットに基づいたソース・オブ・ビジネス(Source of business)を競合と設定し、競争の場を市場とする。万年筆であれば知的なギフト市場だし、スマホのニュースアプリであれば通勤電車の暇潰し市場だろう。

(3)ターゲット消費者:ターゲットとする消費者群を2段階に分ける。1つは長期的な「ブランドターゲット」で、中長期にわたる対象グループ。もう1つは「プロモーションターゲット」で、特定の施策や新商品導入時に限定的に訴求する対象者グループ。こちらはブランドターゲットの一部を規定する。例えば、「運動部に所属する中学生・高校生」がブランドターゲットであるときに、「新しく部活動を始める中学1年生と高校1年生」をプロモーションターゲットに設定する、などがある。「20代、女性」といった年齢・性別に終始しないことは、データで消費者理解をする際の注意事項(関連記事「なぜ『20代女性』がターゲット消費者なのか、自問してみよう」)の通り。

(4)ベネフィット:消費者が購入するもの。だから主語は消費者で、ブランドが主語になる機能や性能と区別することが重要だ。洗剤が汚れを落とすという機能によって、私がどうなれるかが「ベネフィット(便益)」となる。

(5)エクイティ:ブランドが独占的に保有したい「意味」。ベネフィットや機能と強く関連した内容となるが、「ブランドの意味」なので主語はブランドである。ブランドエクイティが強力だと、諸活動の効率が上がり、利益が大きくなりやすい。

(6)パーソナリティー:ブランドの擬人化か、スポークスパーソンを設定するという方法で考えられたブランドの人格。さまざまな接点でブランド体験を提供する際、人格を通して一貫性を担保しやすい。ブランドへの信頼や愛着の主要素ともなり、Valueの体現者でもある。

(7)アイコン:ブランドが長らく使ってきて、失うべきではないと判断した記号や色、デザインなど、知覚できる特徴。アイコンが強力だと、各接点での効率が上がる。

(8)機能/性能:ベネフィットを提供し、エクイティを体現するための性能など、物理的要件や機能的な特徴。ベネフィットとの混乱が少なくないが、ベネフィットは主語が消費者であるのに対して、機能の主語はブランドである。

 ひとたびブランド定義書を通してブランドを定義できれば、しばらく(少なくとも数年)は変えずにいる覚悟を持つことを勧める(プロモーションターゲットはもう少し頻繁に変わるかもしれない)。そのためにも、消費者やブランドをよく理解した上で作成作業に入ることが必要だ。また、強力なブランドを作るにはマーケティング部門が指揮を執りつつも、研究開発や営業、物流、財務に至るまで、各部門と密接に協働する必要がある。全社で共有できるものであることが不可欠だ。8項目すべてが浸透する必要はないが、大義、市場、ターゲット消費者、ベネフィットの4項目は十分に浸透させることが望ましいだろう。