■思考様式の変化を必要とする課題
リーダーが犯す最も大きな過ちは、適応を要する課題を解決したいときに、技術的手段を用いてしまうこと。
問題そのものに着目するだけでなく、「人間」の側の要因にも着目する必要がある。
■免疫マップと
心臓病で死ぬ危険があっても生活習慣を改めない人たちがそうだったように、リーダーと組織のメンバーが変革を成し遂げることを妨げている要因は、基本的に意志の欠如ではない。
本当の問題は 、自分が本心からやりたいと望んでいることと実際に実行できることの間にある大きな「溝」である。
問題をあぶりだす免疫マップ。
“変革をはばむ免疫機能” について知ることにより、変革のプロセスに関してこれまで気づいていなかった「力学」に気づくことができるだろう。
その力学がどのように作用しているかは、私たちが「免疫マップ」と呼ぶ思考の地図を作成することによって明らかになる。これにより、現状だけではなく、どういう点を変えれば変化を起こせるのかも見えてくる。
免疫マップとは以下に説明する4つの枠から構成される。
(第1枠)改善目標
まず自己変革後の目標を明確にすることが(第1枠)の内容になる。
(第2枠)阻害行動(改善目標の達成を妨げる要因)
次に改善目標に対して、いまどういう行動を取っているせいで、目標に反する状況が生まれているのか?という行動をリストアップする。これが阻害行動(第2枠)である。
第2枠に記される行動は、それ自体が問題の「病巣」なのではなく、別の問題が表面にあらわれた「症状」であり、貴重な情報源である。
(第3枠)裏の目標
では、目標の達成が妨げられるとわかっているのに、どうして第2枠の阻害行動を取り続けてしまうのか?
第1枠の改善目標と衝突し、第2枠の行動の背中を押しているのが(第3枠)「裏の目標」である。
このマップの三つの枠は、すべてが一体に結びつき、一つのシステムを構成している。これが私たちの言う「免疫システム」である。つまり、「変化」から本人を守っているのだ。
変革がうまくいかないのは、本人がそれを本気で目指していないからではなく、二つの相反する目標の両方を本気で達成したいからなのだ。そこに本当の原因がある。
強力な阻害行動(第2枠)を取らせる裏の目標(第3枠)を明らかにしないかぎり、問題を正確に定義したことにはならない。
その点、免疫マップを描けば、自分が抱えている問題を正しく理解し、問題を解決するための道筋が見えてくる。
(第4枠)強力な固定観念
その道筋を見いだしやすくするために、さらに免疫マップに4つ目の枠、「強力な固定観念」を加える。