ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

ランチェスター戦略

自動車エンジニアであったイギリスのF.Wランチェスター(1868〜1946年)は、後に航空エンジニアとして飛行機のプロペラの研究に携わった。このランチェスターによる「大戦闘の成り行きは、確実に空軍力の力の如何によって決定づけられるであろう」という自らの提言を証明するために、戦闘で相対する力の関係を数学的に分析する必要に迫られ、発見されたのが「ランチェスター法則」である。戦闘における兵力数、武器効率と損害量の関係を2つの数式であらわしたのが、第一法則、第二法則とよばれるもので、ランチェスター戦略のルーツである。

アメリカは第二次世界大戦時、軍事戦略や予算等の資源配分を有効になすため、コロンビア大学のB.O.クープマンをはじめとする数学者たちを集め、ランチェスター法則の研究を行い、発展した。これが「ランチェスター戦略モデル式」である。この戦略モデル式を活用し、アメリカは第二次世界大戦で勝者となった。

1960年代、“ランチェスター法則”“ランチェスター戦略モデル式”を基に日本でビジネス戦略として応用し、体系化し、販売における競争戦略として普及させたのが経営コンサルタントの田岡信夫先生(1927〜1984年)であり、これが日本でいう“ランチェスター戦略”なのである。

1970年代のオイルショック直後の大企業から中小企業まで、数多くの導入実績と成果をおさめた。普遍の法則性と実践手法の進化、発展を経て現在の新勢力と言われる企業にも数多く導入され、成果が実証されている。

ランチェスター第一法則から弱者の戦略、第二法則から強者の戦略が導きだされました。

ここでいう強者とは市場地位が1位のものです。それ以外は2位であっても弱者であると定義します。市場地位ですから、地域・商品・流通(販路)・顧客の市場単位でとらえます。ですから企業規模が大きいものが強者とは限りません。市場ごとに弱者と強者の立場は入れ替わります。

このように細分化して捉える理由は弱者と強者、この二つの立場のものの戦い方が全く異なるからです。すなわち弱者の基本戦略は差別化戦略。強者の戦略は同質化(ランチェスター戦略ではこれをミート戦略という)。そして弱者・強者にはそれぞれ5つの代表的な戦い方があります。これを5大戦法といいます。

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マーケットシェア理論
自社のシェアはどの段階なのか、そして短期・中期・長期にはどこまで伸ばしていくのか、現状分析と目標設定に活用します。

73.9% 上限目標値
独占的となり、その地位は絶対的に安全となる。
ただし、一社独占は必ずしも安全とはいえない。

41.7% 安定目標値
地位が圧倒的に有利となり立場が安定する40%
は首位独走の条件として多くの企業の目標値。

26.1% 下限目標値
トップの地位に立つことができる強者の最低条件。
安定不安定の境目。これを下回ると1位であっても、
その地位は安定しない。

19.3% 上位目標値
ドングリの背比べ状態の中で上位グループに入れる。
弱者の中の強者。

10.9% 影響目標値
市場全体に影響を与えるようになり、シェア争いに
本格参入。10%足がかり。

6.8% 存在目標値
競合者に存在を認められるが、市場への影響力はない。これ未満を撤退の基準として使われる場合もある。

2.8% 拠点目標値
存在価値はないに等しいが、橋頭堡となりうる。

射程距離理論
シェアの差は下位に対してどこまでつけると安全圏なのか、上位との差をどこまでつめれば逆転可能になるのか。これを射程距離理論といいます。√3倍差(約1.7倍差)が射程距離です。敵の3倍の力で戦えば必ず勝てる3:1(サンイチ)の法則から導き出されました。

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3つのルール

1.NO.1主義

NO.1主義は,NO.1になるという目標であるとともに,そのために,細分化したなかでのNO.1を作るという手段を表している。

ここで言うNO.1とは,たんなる1位のことではなく、2位を射程距離以上

離している1位のことである。

NO.1…1位 ≧ 2位 × √3


2.弱者・弱点優先攻撃の原則

1)弱者優先攻撃の原則

わが国の企業はどうしても情緒的発想が強く,上位それも1位企業に対する意識が強い。 これは1位に対するコンプレックスの表れであろう。特に2位の企業やかつて1位であった企業にこの傾向が強い。

しかし,2位以下の企業がまともに1位と戦っても,まず勝ち目はない。勝ち目があるのなら、とうの昔に勝っているはずなのである。戦いは勝たなければならない。

2位以下の企業は強い相手との戦いを避け,自社よりも弱い相手を叩いてシェアアップし、最後に1位と一騎打ちに持ち込むというステップを踏まなければならない。常に攻撃をかけるのが弱い敵であることから、「弱いものいじめの原則」と呼んだ。

競争目標とは当面逆転すべきであるから、相手は同等もしくはひとつ上位のライバル,攻撃目標とは顧客を奪取する敵のことで、相手は下位、それも足下の敵,つまりひとつ下の敵になる。

   ◎攻撃目標は足下の敵(ひとつ下の敵)

   ◎競争目標…頭上の敵(ひとつ上の敵)

2)弱点優先攻撃の原則

この「弱いものいじめの原則」に加えて、「他社の弱点をつけ」という意味もある。どんな強い企業でも、人間がやることゆえ、完全無欠ということはありえない。必ず手薄なところや弱い点を持っているものなのである。

たとえ、相手が上位の企業といえども、この死角や弱点を攻撃すれば、必ず道は開けるといってよい。

「足下の敵を叩け」「他社の弱点をつけ」という二つの戦略を、ここでは「弱者・弱点優先攻撃の原則」と呼んでいる。

3.一点集中主義

この一点集中主義とは、市場を細分化し、そのなかから重点に置くべきものを決めて、40%のシェアを取るまで攻撃を続けるという意味である。

勝つための鉄則は集中化である。たとえ,強者といえども、人・モノ・金が有り余っているわけではない。力をいれるべきものを決めて、そこに力を集中することが必要だ。

特に弱者は1位に比べヒト・モノ・カネが少ないのだから、総花的に力を分散していてはとうてい勝ち目はない。そこで,地域・商品・顧客層などを細分化し、その中で特に力をいれるべきものを絞り込むべきである。



ランチェスター思考 競争戦略の基礎
http://stack.nayutaya.jp/book/4492556249