セイラー教授がとなえる理論の一つに「メンタル・アカウンティング(心の会計)」がある。消費者は心の中で複数の財布・家計簿を持っている。1カ月の収入に対し、光熱費、家賃、昼食代、遊興費など項目ごとに大まかに支出(心の財布)を決めた上で、家計簿をしっかりつけていなくても「今月はちょっと飲み代多かったかなあ」と思っている消費者も多いだろう。
マーケティングの面から考えると、この消費者の心の財布(支出項目)を変えることによって、単価アップにつながる可能性がある。奥瀬教授は「消費者が心の中に持つ相場観である『参照価格』の基準を変えてあげれば、商品の売れ行きがよくなったり、客単価が上げたりすることができる」と指摘する。