ごろにゃ~の手帳(備忘録)

備忘録的ブログ。経営やマネジメント、IT、資産運用、健康管理などについて書き留めてます。

「思いが届く」「人を動かす」ストーリーの語り方(スピーチ)

効果的に伝わる「3つの型」

<ポイント提示型>
ポイント提示型は、「取り組むべき改革のポイントは、3つあります」などのように、メイン・メッセージを支える論点(ポイント)を並列に示し、解説するスタイルです。自らの考えを端的に伝えたいときや、あるテーマをわかりやすく説明したいときに有効です。

<ストーリー型>
ストーリー型は、実体験とそこから学んだ教訓を、ストーリー(物語)で伝えるものです。「状況設定(事件)→葛藤→解決→教訓」という流れで語ることが基本です。

ストーリー型の良さは、自身が体験したことを、聴き手が追体験することによって、心が動き、話し手の感情が聴き手にも伝わることです。まさに、「感情伝達」が実現するわけです。

使い方のコツとして、自分だけのストーリーを語ることが大切です。自分自身の実体験を語り、そのときに何が見えたか、何が聞こえたか、何を感じたかなど、情景と内面の動きをありありと描写する必要があります。

ありがちなのは、ストーリーを説明してしまうこと。人ごとのように、物事の推移を客観的に説明しても、聴き手の心をつかむことはできません。成功したことだけでなく、経験した困難や葛藤について腹を割って話すことで、信頼の基盤ができ、聴き手の心に訴えることができます。

<ビジョン・アクション提起型>
まずビジョンを提起し、最後に聴き手に対して具体的な行動を促すように語りかける構成法です。ビジョンを描くことで、聴き手に取り組むことの意図や、その先にある社会や企業の未来像が伝わり、それが聴き手の心を奮い立たせます。

キング牧師が「I have a dream(私には夢がある)」と語り、黒人と白人が手をとり合って、ともに社会をつくっていく光景をありありと描いたスピーチも、この型に則って展開されています。アメリカでは定番の型であり、「アラン・モンローの説得技法」と呼ばれる手法が使われています。


モンローの説得技法は、次のステップで話を構成します。

(1)注目
聴き手の注意を引き付ける。

(2)問題点
聴き手が直面する問題点を描写する。

(3)解決策
問題点に対する解決策を示す。

(4)視覚化
解決策が実行された結果、どのような未来が実現するのかを視覚化する。

(5)アクション
解決策の実施に向けて、最初の一歩を呼びかける。

伝説のスピーチとして名高い、スティーブ・ジョブズスタンフォード大学卒業式スピーチは、ストーリー型とポイント提示型を組み合わせて構成されています。これら3つの型を自由に組み合わせて使うことで、わかりやすさと感動の双方を満たすスピーチ、プレゼンをつくることができます。



強い「思い」が人を動かす

TEDで行われたサイモン・シネックのプレゼン「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」は、2200万回以上も再生されるなど、多くの人に支持されています。

シネックは、「『何を』を語る前に、『なぜ』を語ったときに人が動く」ことを伝えました。なぜこの商品を世に届けたいのか、なぜこの会社を立ち上げたいのか、そうした意図や思いを伝えることで、優れたリーダーは、人々をインスパイアし、行動に駆り立てているのだというのです。

シネックのプレゼンは、中身の面だけでなく、話し方の面でも、多くのビジネスパーソンにとって、お手本となるものです。

シネックは、「『なぜ』を語り、周りの人たちをインスパイアしてほしい」ということを、情熱を込めて伝えています。そして、その強い思いが、シネックの目の輝き、声のトーン、拳への力の込め方などに現れています。

このように私たちは、言葉に加えて身体からもメッセージを発しています。たとえば、目は多くを物語ります。聴き手に対して視線を送ることで、「あなたと向き合っている」ことをしっかりと伝えることができます。大勢の人の前で話すときは、すべての人、一人一人の目を見ることは困難です。そのような場合は、会場を3分割して、中央、右、左と、それぞれのブロックにしっかりと視線を送ります。

しかし、ここで大事なのは、どう見られるかを意識して、無理な笑顔をつくるなど、見せ方のテクニックを駆使することではありません。心から湧き出す笑顔ではなく、つくられた笑顔ではかえって、そのぎこちなさが不信感につながります。

大事なことは、「伝えたい思い」を心の底から抱くことです。私たちの心と身体は、脳の構造からも連動するようにできており、ある感情を抱いたとき、その感情にふさわしい表情、仕草、身体の動きが生まれます。

普段は、心と身体は自然に連動しているのですが、緊張したときは、「失敗するのではないか」などと意識が先行して、聴き手に届けたい思いが吹っ飛んでしまったり、身体がガチガチになってしまったりして、心と身体の連動性が途切れてしまうことがあります。

心と身体の自然な連動性を確保するために、スピーチ、プレゼンをする前に、静かなところで心を鎮めることが大切です。聴き手は今、どんな困難に遭遇しているのか、どんなことに挑戦しようとしているのかなど、気持ちを感じ取るように努めます。そのうえで、聴き手のために何ができるか、どんな思いを届けたいのかを改めて確認し、その思いで心を満たしていきます。

思い、言葉、身体が一直線で結ばれたときに、最高の迫力が生まれ、感動を呼ぶスピーチ、プレゼンが可能となるのです。